開発事例③
ピンチを乗り越え奇跡の逆転劇〜試練の先にあるもの〜

[登場人物] ※登場人物は全て仮名です。
システムエンジニア 名護良人、高山(元請システムエンジニア)

北関東を中心に140店舗を展開するスーパーマーケットのマスタ管理業務を新規構築する。
このハピテクの社運を左右するといっても過言ではないビッグプロジェクトに、設計者として参画したのがキャリア29年のシステムエンジニア・名護良人である。

名護は基本設計から携わり、顧客要件を具現化し、なおかつ実務に耐えうる設計を重視して作業を進めた。
基本設計工程を完了し、詳細設計〜プログラムテスト工程へ。その後いよいよ総合テスト(システム間結合テスト)にさしかかろうという時だった。

発注者である元請企業のマネージャー・高山から突然
「商品マスタの登録画面を変更してほしい」と告げられたのである。

商品マスタは小売業の基幹システムの中でも最も重要であり、各種サブシステムの要ともなるマスタである。
その設計は、小売業界に精通したシステムエンジニアでなければこなせないとされるほど難易度が高い。それゆえこのプロジェクトでも業界に明るい名護が設計を担当していたのだ。
順調に進んでいたプロジェクトに対する、寝耳に水ともいえる変更依頼。その内容は「マスタデータに商品画像を取り込みたい」というものだった。
これは打ち合わせで一度くすぶっていた顧客要件だったが、要件定義の段階で開発費用と利用効果を天秤にかけ、今回のプロジェクトでは実装しないとの合意が取れていたはずであった。
しかし顧客側の幹部社員が異を唱え、商品画像の取り込みが行われないならプロジェクトは白紙に戻すと強硬に発注者にねじ込んできたのである。

名護は賭けに出た。

商品画像の取り込みを実装した場合の影響を最小限に抑えるべく、前提条件を列挙し方式概要を作成。その上で「この方式でお客様と合意してきてください」と、顧客との折衝を高山に一任したのである。高山も迅速に打ち合わせの場を設け、費用面でも納期面でも最良の方式であることを顧客に訴え、半ば強引に合意に持ち込むことに成功した。その間も名護は、画像取り込みに関する変更設計書を作成し、総合テストの期日を守るためにプログラマーに作業指示を出しながら粛々と開発作業を進めた。もちろん、自身が提示した処理方式で高山が合意を勝ち取ってくることを信じて。

そして名護は賭けに勝ったのである。
元請企業の高山との信頼関係が生み出した、見事なチームプレーだった。

大きな山は乗り越えた。
しかしその後も要件定義時の解釈齟齬による設計漏れ、プログラマーのスキルのばらつきに起因する品質問題などが発生するが、それらの障壁も突破し、見事にシステム本稼動のゴールテープを切ったのである。
発注者の絶大な信頼を得た名護。プロジェクトがクローズした後も、高山が別プロジェクトを担当する際に、名護を呼び寄せたことは言うまでもない。

「システムエンジニア冥利につきますね」

と名護は笑うのであった。